第三部

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一通り眺め、視線をふと環の足元に置く。 涼介は心臓に矢が刺さったような衝撃を感じた。 「な、なんて小さい……」 白い革製のミュールはとても小さい。環の身長は高いヒールを履くとほぼ薫樹に近くなる。彼女をかっこいい女性だと涼介は思ったが、大きな女性は大抵足も大きいだろうと、全く好みの対象ではなかった。 相手も全く自分に関心がない様なのでお互い様なのだが。 ところがいざ足を見るとどうだろう。身体と比例しなくてもサイズが小さいことがわかる。恐らく22センチないだろう。自分のてのひらよりも小さいかもしれないと涼介は環の足と自分の手を見比べる。 環のような素っ気ない女性になんら好感は持てないが涼介は彼女の足のことが頭にこびりつく。頭を抱えていると薫樹との話は終わったようで、「それじゃ」と彼女は立ち上がり、また濃厚な香りを残して立ち去った。
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