第三部

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ちょうどそこへ芳香と真菜が通りがかる。 「あ、薫樹さんと清水さん。こんにちは」 「こんにちはー」 「ああ、芳香と立花さんか。お疲れ様」 仕事帰りの芳香と真菜はこれからカフェ『ミンテ』でゆっくり過ごすつもりのようだ。 「やあ、芳香ちゃんと、えっと、『銀華堂化粧品』の社員さんだよね?」 涼介は言葉も交わしたことのない真菜のことを覚えている。 「ええ。そうです。よく私のことご存じでしたねえー」 感心する真菜に「そりゃあ、可愛い女性は一回見たら忘れないからね」と涼介は爽やかに笑顔を見せる。 「ふふっ、ありがとうございます」 「じゃあ、私たちここでお茶しますから、また」 「ああ、また週末に」 「お店に来てくれてありがとうね」 頭を下げて芳香と真菜は店内に入っていった。 涼介は「うーん」と腕組みをして首をかしげる。 「どうかした?」 「いえね、ここんとこ素っ気ない女性が多いなって」 「そうかな」 「そうですよ」 「ふむ」 芳香も真菜も環もまるで涼介に関心がない様子に涼介は少し不満げだ。 「モテ期が終わったってことかなあ」 「そんな期間があるのか」 「ええ。人生には3回モテ期があるようですよ」 「ふむ。君は面白いことをいっぱい知ってるな」 「やだなあ。常識ですって。さてなんか場所換えて飯でも食べません?」 「ん? ああ、いいよ。しかし君も忙しいだろうによくうちの会社やらに来る暇があるね」 「え、ええ、まあ、ちょっと色々心配もありますしね」 「そうか。無理しないように」 「そうしますー」 「じゃ、この近くの串屋いきましょうー。前、芳香ちゃんといったとこですよー」 「うん、いこう」 涼介は薫樹と環が接近しないようにできるだけ見張るつもりだ。そして早く薫樹と芳香が結ばれてほしいと親心のように願っている。
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