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ミントの道を抜け涼介のレンガ造りの小さな家の前に立つ。カフェ『ミンテ』とよく似ていて、とても可愛らしい建物だ。
「ああ、客用のがなかったな。俺の履いて」
涼介は自分のスリッパを指さすと、環は小さなスニーカーを脱ぎ、そのスリッパを履いたが、子供が大人の靴を履いてぶかぶか歩くような姿になる。
「あちゃー、大きすぎるな」
「そうね」
小さな足で大きな履物を履いた姿に涼介は思わずキュンとなってしまう。
「ルームシューズはなくても平気」
「ん、今度君のを用意することにしよう」
キッチンはアイランド型で小さいが開放感があり、こざっぱりとして清潔だ。
「そこ座ってて」
環はすぐキッチンに隣接されている小さな木のテーブルにつく。涼介は湯を沸かし、使い込まれているがよく磨かれた銀のポットとグラスをだしてカチャカチャとお茶の用意をする。
やがて爽やかで甘い香りがうっすら漂い始めると、涼介はテーブルに置いたグラスへモロッコミントティーを注ぐ。
「どうぞ」
「ありがとう」
二人で静かに香りを嗅ぎ、リラックスしながらお茶を愉しむと時間の流れがここだけゆるやかな気がする。
「あなたはこんな雰囲気のところが好きなのね。カフェもそうだったけど」
「うん。俺は結構カントリーっぽい方が好きなんだよ。君はホテル慣れしてるのか、ああいうところの方がやっぱり好きなの?」
「好きでも嫌いでもない。でも施設育ちだから、別になんとも思わないだけ」
「ああ、そうなのか。じゃあこういうところは嫌い?」
「ううん。ここはとても素敵ね。温かい気がする」
「よかった。もっと君の事を聞いてもいいかな」
「いいけど、そんなに面白い話はできないわ」
「面白くなくていいんだ。ただ、なんていうか、もっと知りたいだけ。どうしてモデルを目指したのかとかさ」
「そうねえ……」
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