第四部

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無機質な寝室がルームフレグランスとラブローションと二人の体臭とで一気に有機的な、動物的な部屋に変わっている。 どんなに淡白な人間でもこの部屋に一歩入り、この香りの洪水に巻き込まれれば即、発情してしまうだろう。 薫樹は芳香の爪先を丹念に口づけ香りを嗅ぐ。はじめの頃の実験のように爪先から、踵、膝、脛をサラサラと撫で上げ、舐める。 芳香はすでに薫樹と騎乗位で繋がっていて、足の愛撫に喘いでいる。 「あんっ、ああんっ、あうっ、うっ、あっ、ああんっ――」 「こんな香りに満ちたことは人生で一度もないな」 薫樹は芳香の香りを堪能しながら悦に入り、芳香は薫樹の上で、腰をくねらせ快感を深く味わっている。 「ああ、そこが、気持ちいいのか……」 「あっ、は、い、ここ、き、もちい、いっ」 まだセックスに慣れていない二人は快感を探り合っているところだ。薫樹は芳香を上に乗せ、彼女自身に快感のポイントを探らせている。 少し背中をのけぞらせ、彼女は一定の場所を薫樹の剛直でこすっている。 「恐らく、そこはGスポットと呼ばれているところだろう」 「あ、あっ、あん、ここ、が?」 「なんとなく、わかったから僕が動こう」 身体を起こし、芳香を抱きかかえ、薫樹が上になる。足を開いたまま両膝を抱えさせ、薫樹は腰を固定するように持つ。 狙いを定めゆるやかに、しかしリズミカルに腰を打ち付ける。 「やっ、はあっ、ああっ、き、き、、もちっ、いっ、あっ、あっ――」 「ああ……いい具合だ。香りも強くなってきた……」 遅咲きの二人は香りと快感に溺れて夢中で抱き合う。
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