第四部

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襖をスッと開け、透哉と鈴音が顔を出す。 「ただいま。ああ、薫樹、ついていたのか。歩くのが早いな」 「おかえり、兄さん。お久しぶりです。義姉さん」 「こんにちは。薫樹さん」 透哉は視線を芳香に向け微笑む。彼は母親似らしく、丸顔で童顔だ。愛嬌の良さそうな笑顔で透き通るような声をしている。妻の鈴音も小柄でふっくらとしているがぱっちりとした目がより可愛らしく若々しい。 「紹介するよ。柏木芳香さん。結婚しようと思っている」 「初めまして。よろしくお願いいたします」 芳香はまた慌てて頭を下げると、兄夫婦は気さくな様子で「こちらこそー、薫樹をよろしくね」と歌うように言う。 薫樹が透哉は調律師だが鈴音は民謡教室の先生だと紹介してくれた。なるほど透哉はスーツだが鈴音は和服で彼女の声は優しく耳に心地よい。
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