第二部

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「お似合いだったなあ……」 薫樹と美月が向かい合わせで座っている姿を思い出す。 ボディーシートのコマーシャルをテレビで見た。その時の美月はふわっとした長い薄茶色の髪に、グリーンのシフォンドレスを纏い伸びた長い手足をするっとシートで滑らかに拭きあげる森の妖精だった。まだ歳若く新人だが、今回のイメージガールに抜擢されたことで各界から注目を集めているらしい。 今日の美月はコマーシャルの印象とは全く違い、ツヤツヤしたピンクゴールドのワンピースでキュートな女の子だ。 薫樹はラフではあるが薄いブルーのドレスシャツで、相変わらずクールさを引き立たせている。 髪や肌の色素の薄さは彼の硬質な雰囲気を柔らかく品の良さに変えているようだ。 「お内裏様とフランス人形みたいだったなあー」 写真を撮りたいくらいに綺麗な二人を目の当たりにすると、嫉妬するよりも納得してしまうのだった。 薫樹が自分の事をフィアンセと紹介してくれていることが芳香にとって嬉しいと、今はまだ素直に思えない。 長らく湯船につかり、今夜のことを思いながら身体を撫でたが、気分が暗くなってきたので上がることにした。
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