第二部

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ハーブ園に到着し、車から降りると風に乗ってラベンダーの香りが二人を出迎える。 空は高く青く広々として、空気も時間もゆっくりしているようだ。 「あー、気持ちいいー」 「うん、いいところだな」 並んで庭園をゆったり歩く。ラベンダーは一斉に紫の花を咲かせそよ風に揺れ、香りを漂わせている。普段、店で見慣れているハーブではあるが、広々とした場所に太陽の下で群をなす姿に芳香は圧倒される。 「ああ、カモミールも可愛いんだあ」 小さな白い花々の前にかがみこみ芳香は胸いっぱいに香りを吸い込む。 子犬のように駆け回りはしゃぐ彼女を薫樹は微笑ましく眺める。 「いいなあー。私、こんなにハーブが好きになるなんて思わなかったです」 「そうか。僕は元々ハーブは好きだよ」 「そうみたいですね。薫樹さん、よくハーブティー飲んでますもんね」 そう言うと芳香の腹がぐぅっと鳴った。 「あっ、やっ、やだぁ」 赤面する芳香の腕をとり、薫樹はエスコートする。 「そこでランチにしようか」 「は、はいっ」 二人はオープンテラスのレストランで食事をすることにした。
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