第二部

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食事の後、体験コーナーというところに立ち寄った。ハーブを使った石鹸づくり、アロマオイルで香水作りなど色々な講座があるようだ。 「へー、色々体験できるんですねえ。自分の好きな香水かあ」 芳香はやっと自分の匂いを改善したばかりなので、まだ香水をつけることを考えるには至らなかった。 「興味があるかい? 香水に」 「そうですねえ。自分に香水をつけるっていうことはできなかったですからねえ」 「ふーむ。君は何もしなくても、いい香りだから必要にはないが、何か好きな香りがある?」 「好きな香りかあ。なんだろ、銀華堂化粧品にいたころは会社中が香料のいい匂いがしてて、今の職場も木とか花のいい匂いがしてて――。そういえばこれが好きっていうのがないかもしれない……」 「芳香はなかなか香りに偏見がないようだな。まあ僕もそういう意味では強い好みはないな。君の香りが一番好きだが」 「えっ、ちょっ――」 足に施される愛撫を思い出し、芳香はまた赤面する。そして言わないが自分も薫樹の香りが一番好きだと思った。
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