第三部

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店の前にミントの苗を整頓しながら芳香は「変な人だったなあ」とミント王子のことを思い出した。 そこへ常連の勝俣房枝がやってきた。 「おはようございます。勝俣さん」 「おはよう、芳香ちゃん。あらあ、ミントあるのねえ。それ頂くわー」 「あらミントお好きでしたっけ? いつもはお花を飾られるのに」 「うふふっ、芳香ちゃん昨日のハーブ講座のテレビ観てないのぉ?」 「ああ、昨日は見逃がしちゃって」 「もうっ、ミント王子のカッコいことカッコイイこと!」 「み、ミント王子……」 「王子が言うことにはねえ――」 房枝はぽっちゃりした身体を揺さぶりながらミントのリフレッシュ効果と消化の促進の話を始める。 「で、さっそくフレッシュミントティーを飲んで、ミントのサラダを食べたいなあ、なんてね」 溌剌と恋をする少女のように初々しい様子で房枝は苗を取り上げる。 「あ、そっちはペパーミントですね。こっちのスペアミントの方が香りも優しいのでお料理に使いやすいかも」 「あらっ、ほんと。ちょっと違うわねえ。さすがね。芳香ちゃんもよく知ってるのね」 「いえー、まだまだ店長の聞きかじりで。じゃ、袋に入れてきますね」 ミントの葉が揺れると清涼な風が吹いたように爽やかな気持ちになる。(薫樹さんもミントティー好きだもんね) 芳香はミントを房枝に手渡しながら、今週末はちょっと手の込んだミントの飲み物を薫樹に振舞ってみようかと思案した。
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