第三部

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『銀華堂化粧品』では創立50周年を記念してパーティーが行われることになった。 社員である薫樹はもちろんのこと、真菜も参加する。 ミント王子こと清水涼介もゲスト招待されていた。芳香は薫樹から同伴で参加しないかと誘われていたが、自分を知っている他の女子社員に彼と付き合っていることを知られたくないため断った。しかも社員とはいえ、会社の中でエースという立場の薫樹と平凡な自分が一緒に出掛けても場違いであろう。 薫樹にパーティの様子を聞いても、きっとよくわからないだろうと思い、芳香は後で真菜にどんなパーティだったか聞こうと思っていた。 パーティーはホテルを貸し切って行われる。 招待人数も多いので立食パーティーだ。壇上では開会式の挨拶をはじめ、『銀華堂化粧品』を設立した会長、現取締役たちがスピーチを行った後、今後の方針、展開について語られた。 『銀華堂化粧品』は今までスキンケア、ボディケア用品に力が入っており、それらに香りをつけるため薫樹は調香をしていた。今回、50周年を記念して、香水を開発、販売するという。日本では香水そのものに販売力があるわけではない。 日本人の体臭が薄く、香水を必要とすることがないためである。古代では香を着物に焚き込み、現在、柔軟剤などで衣服に香料を浸み込ませる、そのやり方は間接的であって、直接、身体に身に着けるものではない。また香水を好むものは海外の有名ブランドのものをすでに身に着けている。 会社の狙いとしては、日本人を対象とした香水開発ではなく海外に向けた日本の異国情緒を感じさせる、ジャパネスクパフュームを販売したいのだ。それが海外に評価されて初めて国内のユーザーが増えるであろうという目論見だ。 ある意味社運を賭けた開発になるだろう。 薫樹も調香師として意欲を燃やしている。
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