第三部

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司会のものがここで今回の香水のイメージとなるモデルの紹介を始める。カツコツと軽妙なヒールの音がする方を社員一同目を向ける。そして息をのみざわついた。 「皆さん、お静かに」 壇上にすらりと伸びた高い身長のエキゾチックな女性が現れる。漆黒で硬いまっすぐなショートボブに切れ長で鋭い目。鼻筋は細く、高く鷲鼻に小さいが肉厚の唇が、東洋人だが謎めいた印象を与え無国籍な様子でもある。くっきりとした鮮やかなオレンジ色のタイトなカクテルドレスが浅黒い肌を引き立たせている。 「ご存じない方はいらっしゃらないと思いますが、ご紹介いたします。世界でも活躍中のスーパーモデル『TAMAKI』さんです!」 「よろしく。TAMAKIです」 クールな表情に少しだけ笑みを乗せ会場を一瞥する。 社員たちはまたざわめき始める。 「すごいなあー。TAMAKI呼んだのかあー」 「これ、会社めっちゃ本気じゃん」 「うわー、でっかいのに顔ちっちぇえー」 「何、あのウエストの細さ、信じらんないー」 コホンと司会者が咳払いすると会場は静まった。 「えー、では皆さん、今夜はゆっくりと楽しんでください」 管弦楽団による演奏が始まり、会場は賑やかになった。
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