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リナリア
私には友だちがいない。
小学生の頃は、割と友だちは多かったと思う。毎日、仲良しグループと呼ばれる小さな組織で、面白可笑しく遊んでいた。私は皆んなが大好きだったし、ずっとずっとこの友情が続けばいいな……なんて考えていた。
まぁ、向こうがどう思っていたのかは、今となっては解らないけれど……。
中学生になって、その小さな組織に属すことが少しばかりしんどいと思うようになった。
誰かが右に行こうと言えば全員で右に行き。
今度出かける時の服はピンクにしようと言われれば、それ程好きでもないピンクの服を母にねだる。
嫌われないように……仲間外れにされないように……と皆のご機嫌をとることに、私は疲れてしまった。
いつのことだったか——今日はみんなでポニーテールにしようと言ったじゃない‼︎ と責められた時、私はつい口を滑らせてしまったのだ。
「みんながみんな、同じじゃなくてもいいんじゃない?」
確かにそうだ。それは、今でも思う。
皆が皆、同じような髪型をし、同じ制服を着て、同じ靴下を履き、同じ靴を履き、同じ鞄に同じ教科書を詰め込む。皆が同じ方向を見て、同じことを学ぶ。答えは1つしかない。それ以外は全部間違いだ。
きっとそれが当たり前に正しいことで、それに馴染めない私が規格外なのだ。
「なにそれ。約束したのに破るとか……最悪」
「ごめん」
私はぺこりと頭を下げたけれど、皆はさっさと何処かへ行ってしまった。自業自得だ。
皆が同じではなくてもいいのではないかと問いかける正しいタイミングがあったとしたならば、約束する前だったに違いない。
今さらこんな発言をする私は、ただただ空気の読めないうっとおしい奴だ。
教室にぽつんと取り残された私は、酷く孤独で、酷く心細かった。
けれど、もう明日からは嫌いな色の服を着なくてもいいし、髪の毛も結ばなくて良いのだと思うと、少しばかりホッとしたものだ。
それ以来、私はいつも1人だ。
こんな風にねじ曲がった考えを持った私は、誰とも分かり合えないのだろう。1人でいれば、誰のことも不愉快にさせずに済むのだ。
1人、万歳。
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