7、ぼくのおねいちゃん改

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日頃お姉ちゃんの拳がよく飛んでくるから、空気を読んで行動するクセがついていた。だからというわけでもないけど、後日お姉ちゃんに卒業式の日に撮った写真を見せてもらったとき、あぁ、こういうことだったのか。と腑に落ちることがあった。 お姉ちゃんが大勢の友達と撮った写真には、どこにでも男の子になった雪ちゃんが写っていた。 暑い日も寒い日も、自転車置き場で雪ちゃんはお姉ちゃんを待っていた。僕が廊下を歩いていただけで、一緒にお姉ちゃんに会いに行った。夕暮れ時に、ヒンヤリした風が吹く中で、陸上部が練習するグラウンドを見ていた。つまりそういうことだ。 僕も雪ちゃんも、お互い絶対に叶わない恋に落ちていた。 その後、雪ちゃん、いや雪くんがどんな進路を選んだのかは知らない。ただ一つ、僕のお嫁さんになる杏は、ガハガハと大きな口を開けて大きな声で笑ったり、ケーキのローソクが500本くらい一度に消えそうなほどのクシャミをしたり、合唱コンクールで彼女の歌声しか聞こえなかったりするタイプである。 そう、例え親友に「実は心が男の子で、あなたのことがずっと好きだった」と言われても、これまでと変わらない態度で接してくれる。突然男子用の制服でみんなの前に立っても、その覚悟を受け止めて一番そばで守ってくれる。そんな人だ。 結婚式当日は、久しぶりに姉に会う。きっと泣きながら、思い切り叩いてくるんだろうな、しかも、グーで。 杏のブーケトスには、黄色のひまわりの花を選んだ。あの日と同じ、黄色の花。 彼女はきっと、『ゴーカイ』に投げてくれるだろう。良い天気になるといいな。
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