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1、ぼくのおねいちゃん
僕には6つ年上のお姉ちゃんがいる。名前は『かおる』と言って、17歳だ。ママはお姉ちゃんのことをよく『ゴーカイ』だと言う。ガハガハと大きな口を開けて大きな声で笑ったり、ケーキのローソクが500本くらい一度に消えそうなほどのクシャミをしたり、合唱コンクールでお姉ちゃんの歌声しか聞こえなかったりしたときに、その『ゴーカイ』という言葉を聞いてきた。
お姉ちゃんの通う高等部は髪が長くて肌が白い女の子しか行けないところなのかと思っていたけど、僕のお姉ちゃんは首が全部見えるくらい髪が短いし、陸上部でたくさん走るから肌は僕より黒い。「本気で走ると50m走、何秒で走れるの?」と聞いたとき「100しか測ったことないからわかんない」と言われた。こっちだって100m走ったことがないからわかんないよ。僕はお姉ちゃんのこと、実はちょっと怖い。もう少しくらい雪ちゃんみたいに静かにニコニコしてたっていいような気がする。
僕は、肌が白くて髪が長くて、まるでお姉ちゃんとは正反対の雪ちゃんのほうがお姉ちゃんみたいだなぁって思ってた。だから、小学一年生のときに家族のことを書く作文で『ぼくのりそうのおねいちゃんはゆきちゃんです』と書いた。
今でも忘れられないくらい、思い切りお姉ちゃんに叩かれた。しかも、グーで。
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