6、天変地異

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それ以降、お姉ちゃんはテレビで甲子園優勝校が特集されているのを見たらフワッと耳を赤くさせたり、夕飯を一目見て「あいつが好きなカレー……」と声が聞こえてきそうなほどの表情をしたりした。僕はというと、降ってくる拳の回数が少し減ったのでそこに関してはちょっと嬉しい。でもお姉ちゃんの意外な表情に出くわすたび、見てはいけないものを見ている気分になってしまっていた。 しかし、そのお姉ちゃんのフニャフニャ期も長続きしなかった。幸せいっぱいになったかと思いきや、満開の花が少しずつ枯れていくように目に見えて少しずつ元気がなくなっていった。リビングでお姉ちゃんと二人でテレビを見ているとき、 「なんで元気ないの」と殴られる覚悟をして聞いてみた。少しの沈黙の後、こちらを見ずに、 「……雪にさぁ、無視、されてるんだよね……」、別にいいけどね、と付け足してお姉ちゃんは二階にある自分の部屋に行ってしまった。僕はCMが流れている最中も、番組が再開してからも、番組が終わってからも、次の番組がはじまってからも、ずっと頭の中では嫌な妄想が止まらなかった。 あの雪ちゃんが、お姉ちゃんを無視? 本当にそんなことする? 万が一本当に無視していたとして、なんで? 話したくない理由がある? でもそんなことするとしたら、もっと昔から意地悪しないか? 最近お姉ちゃん何かした? 最近のお姉ちゃんにあった変化といえば、彼氏ができた? お姉ちゃんに彼氏ができて、気に入らない? でも友達が幸せなら嬉しいよね? それが嬉しくない? ということは…… そうか。 お姉ちゃんの彼氏のこと、雪ちゃんは好きだったんだ。
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