7、ぼくのおねいちゃん改

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卒業式の日は良い天気だった。綿を少しだけ千切って投げたような雲が浮かんでいる。3月の頭は肌寒かった。僕たち初等部の生徒は高等部の卒業式に参加しない。では何をしに登校したかというと、廊下を練り歩く卒業生に拍手するためだ。ただそれだけ。 僕はぼんやりと、教室に設置してあるテレビから流れる高等部の卒業式を眺めていた。毎年全ての教室に中継している。 テレビからは、涙をこらえる卒業生や、ビデオカメラを回す保護者の顔がはっきり見えた。 どこかにお姉ちゃんとママとパパがいるんだろうけど、見えるかな。とふと思ったとき、 「テツのねーちゃん!」と誰かが小さく叫んだ。お姉ちゃんを知っている友達が、どこどこ、あっいた!と声を上げた。僕もお姉ちゃんを見つけた。口にぎゅうっと力を入れて、涙をこらえているように見えた。でも、雪ちゃんは見つからなかった。卒業式の放送中、僕はずっと雪ちゃんを探していたけれど『春よ』が流れ卒業生が退場するときですら、ついに見つけることはできなかった。
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