4、昼そのに

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4、昼そのに

高等部の教室まで行くのは、初めてではなかった。ママが僕とお姉ちゃんのお弁当を間違えるのは、数えられないくらいあった。お姉ちゃんの教室に行くといろんなひとに声をかけてもらえた。なんせ『ゴーカイ』なお姉ちゃんなので、「テツ、ねーちゃんに殴られてない?」「こんなに可愛い弟がいるの羨ましい~」なんて言われる。ただちょっとだけ緊張するのは、高等部になると男子と女子の教室が別々になるため、お姉ちゃんの教室にはいつも石鹸みたいなにおいとか、甘いお菓子のにおいがする。僕はそのにおいにいつもビクビクしてしまう。お姉ちゃんからいいにおいがしたことなんて一度もないのに。初等部と中等部、高等部をつなぐ長い長い渡り廊下を弁当箱を持って早歩きする。この廊下は天井と壁が全て強化ガラス張りで、このあたりの景色を一望できたり、校庭の様子なんかを見ながら歩けたりする。ここがとても好きなんだけれど、早く弁当箱を交換しないと食べる時間がなくなってしまうのと、前にもたもたしていたらお姉ちゃんが間違えた二段とも全部食べてしまったことがあった。なぜ取り替えようと思わなかったのか聞くと、 「おかずの下にご飯が隠れてるのかと思って、探してたら全部食べちゃったよ」 と言ってガハガハ笑っていた。
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