4、昼そのに

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あのときはあとから白いご飯を食べるのが嫌だったなぁと思い出しながら歩いていると、前のほうがふと少し明るくなった気がして顔を上げた。 そこには伏し目がちに長い髪を手で押さえながらこちらに向かって歩いてくる、雪ちゃんがいた。 柔らかそうなサラサラした髪が歩くたびに揺れて、そこに光がさして頭に天使の輪っかが出来ていた。気のせいかもしれないけど、少し微笑んでいるように見えた。 「雪ちゃん」僕の声に反応して、ゆっくりと雪ちゃんが顔を上げる。少し世界からワンテンポ遅れたような仕草に、なんだかドキッとした。 「……テツくん。どうしたの、かおるに何か用かな」 と少しだけ顔を右に傾けてぼくと弁当箱を交互に見た。間違えられた弁当箱が恥ずかしくて、なんと言おうか戸惑っていると、 「一緒に教室まで行こっか」 と笑ってくれた。上の前歯が見えて、雪ちゃんは動物に例えるとウサギみたいだなぁ、肌が白いから白ウサギかなぁ、なんてどうでもいいことを考えてしまった。 そのあとのことはほとんど覚えていない。雪ちゃんが僕に何か質問してくれて、それに「はい」か「いいえ」で答えて、よくわからないことは考えているふりをしていた。あとになってすごくすごく恥ずかしいことに気がついたけれど、ぼくは精一杯かっこつけていたような気がする。気のせいだといいんだけど。 僕を連れてきた雪ちゃんに簡単に挨拶して、お姉ちゃんはやっぱり「来るの遅いからベントー全部食べちゃったよ」と言って空っぽの弁当箱を見せてきた。信じられない気持ちでいっぱいだった僕に、お姉ちゃんの友達がからあげやスパゲティ、玉子焼きや白身魚のフライなんかを弁当箱の蓋に乗せてくれた。ごめんね、私お昼食べちゃったから、よかったらこれ、と言って雪ちゃんがくれたミルク味のキャンディが一番嬉しかった。一人でこっそり食べたくて、僕はそのキャンディをそっとポケットにしまった。
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