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文面だけ見ると他愛ないやり取りに見えるかもしれないけど、これ、カエルと牛と俺の三人の会話だから、一応。人形を操っているヤツは相変わらず無表情のまま。時々、こいつ、ちゃんと息してんのかって思う。それくらい口も目も顔の筋肉も動かさない。徹底している。
『で、和泉君はどこに行くつもりだったの?』
「ようやく名前で呼んだな。ここまで長かったな。バスケ部の手伝いが終わったから着替えに戻る所だったんだよ」
『…あぁ、大変な目に遭っちゃったね。お疲れさま』
「何だよ、その憐むようなセリフは。普通に労え普通に」
顔の真近に迫る牛とカエル。腹立つな、ったく。
こいつが言ってるのはあれのことだ。あれ。孫灯歌。まあ、サクッと言ってしまえばちょっと前まで好きだったヤツだ。
いつからとか、何キッカケで、とかいうものは特にない。
ただ、いつからか、何でなのか、気が付いたら好きになってたヤツだ。
知り合った時にはもう灯歌には好きな男がいて、すっげぇ年上のそいつに灯歌は人生の半分以上かけて片想いをしていた。気の長い話だ。けど、はしゃぐ灯歌を見てればすぐにわかった。灯歌は恋っていうヤツに恋してるだけだって。
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