10月

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体育館で俺たちバスケ部はフリースロー対決なんてイベントをやっていて、そこで灯歌とあの男を見かけた。灯歌と話していた男は見るからにわかりやすいイケメンってヤツだった。体育館中の女子がみんなキャーキャー言っていた。見た感じ、女子に騒がれることに慣れてますっていう感じのヤツだった。わかりやすい、大人の王子様っていうヤツ。 よりによって、こんな男に引っかかってんのかって思った。灯歌はバカの上にバカがつくくらいバカでマジメなヤツで、直球しか投げられないヤツだ。だから、ちょっとその気のあるフリをすればすぐ本気にする。からかわれてるに決まってんだろって。 そう思ってた。だけど。 「俺、すっげぇ勘違いしてた。なんだよ、あんなに騒いだりして損した。ただかっこわりぃとこ見せただけじゃん、俺」 さっき。自分の出番が終わってようやく解放された。あいつらがどこに行ったのか探した。そうしたら、ちょうど廊下を歩いて行く二人を見た。体育館で見た男とは別の、だけどやっぱり年上の男だった。学祭なんかにスーツで来るような気取った野郎だ。 あいつだって思った。あいつだってわかった。 灯歌がずっと、好きなヤツ。 『そっか。来てくれたんだ。仕事の都合で来られないって話してたけど』 「なんか、案外普通のヤツなんだな。チラッとしか見れなかったけど」 『そう?わりとイケメンだと思うけど。女子と男子の差かな?』     
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