誰かの願いが叶うころ。

１０月

俺が笑うとこいつも笑った。小さなカエルと牛の向こうに隠れたつもりでいるこいつ、さくら。

「じゃあな。お前も風邪引くなよ」

カエルと牛のパペット人形で会話をするこいつの名前を呼ぶヤツなんて、今ではほとんどいない。だけど、ちゃんと感謝を伝える時くらいは名前で呼ぶべきだろ？これでも一応感謝してんだぜ。

ま、こいつもまさか俺が名前を呼ぶなんて思わなかったみたいな反応だったけど。

灯歌との付き合いが長いように、こいつとの付き合いだって同じくらい長い。

そんなこいつが言うんだ。俺はかっこいい大人になれるって。んじゃ、なれるかもなって思うじゃん？

だから今はまだ、かっこわりぃままでもいっかって。

思うわけよ。