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とはいえこの2年間の苦しみを思えば、彼にとっては長いながい2年だったんだと思う。
でも、だからこそ、わたしが言ってあげないとだめなんだ。
それはもう、過去のことなんだって。
だって全ては、元に戻ったんだから。
***
最後の目的地へと向かう車内で、わたしは笑いを堪えるのに必死だった。
「いやー、まさか、あんなところまであの日通りになるなんて」
あの後彼は、意を決して『僕と、結婚してください!』と叫んでかつてのプロポーズを再現した。そしてその瞬間、ちょうど彼の後ろに高校生くらいの若いカップルが上って来て、彼は『あっ……』とか『えっと』とか言いつつ、最終的に『失礼しましたっ!』と展望塔の階段を逃げるように駆け下りた。
それはくしくも、彼が私にプロポーズした日と全く同じ展開だった。
「まさか、仕込んだりしてないよね……」
「いやいや、そこまではしないよー。ほんとに、偶然」
ぷくく、と堪えきれず笑いが漏れてしまう。
「ひどい偶然だよ、まったく……」
ひとしきり彼をからかったところで、車は長いトンネルへと入った。
「それにしても、あのお洒落な環水公園デートのあとに山奥の温泉って、すごい組み合わせだよね」
「いや、うん。僕もそう思う」
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