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わたしと同じように、夜空でも見上げてるんだろう。「ふぅ……」と長いため息をついて、
「美奈穂が事故に遭ったってきいたときは、本当にびっくりしたよ」
……独り言ってわけじゃないだろう。
「ごめんね。わたしが、もっと気をつけてれば……」
「いや、美奈穂が謝ることじゃないよ。悪いのは全部、美奈穂を突き落としたあの人なんだから」
彼は「んんっ」と、たぶん大きく伸びをした。
「でも、もう大丈夫。あの人は捕まったんだ。あんなことをするような人は、そうそういるものじゃないよ」
「……うん」
彼はそう言ったけれど、そうだろうか、とも思う。
事実、環水公園の赤い糸電話だって、これまで幾度となく断ち切られている。
……でも、彼だってそんなことは承知の上だろう。
わたしを勇気付けるために、あえてそう断言してくれているんだと思う。
――本当にこの人は、どこまでも優しい。
そんなに優しくされると、定期健診で優しさの過剰摂取を指摘されちゃうよってくらいに。
「今ではこうして、全部、元通りだ。……今日は、それを伝えようとしてくれたんだよね」
わたしの思惑なんて、最初からばればれだったらしい。
それを見抜いた上で、彼は今日一日、わたしに付き合ってくれていたんだ。
……そう。だからこそ……
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