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栄田「最後に、感情の皆無、人造物は短期間で成人と同じ体格に成長します。故に、感情や、人格が形成されるのは不可能ということです。」
前野「何故ですか?」
栄田「人間の性格は、個人の教育や環境によって作り出されるものです。何を見て喜ぶのか、何を聞いて悲しむのか、長い年月で経験した過程で、性格が育まれていきます。一方で、人造物は人格を育む猶予がありません。」
前野「つまり、生まれたての赤ん坊のような物ですか?」
栄田「もちろん、成人並みの言語力や、日常生活に必要な行動、人造物自身の特徴など、基礎的な知識は植え付けられています。」
栄田と前野、二人の応答を遮るように、黒いスーツの腕が上がった。
内藤「毎報新聞さん、どうぞ。」
「毎報新聞です。栄田先生、そもそも、人造物の存在は、殺傷事案の根本的解決になるんですか?」
栄田は一呼吸をおき、マイクを口に近づけた。
栄田「実は、すでに対人による実験を行いました。」
「実験って・・・・」
前野「実際に、誰かが人造物というものを殺したということですか?」
栄田「はい。被験者は、死刑囚です。木俣先生の御尽力の元、特別に許可を得て実行しました。」
「それは、人体実験ということになるのでは?」
栄田「被験者は、『人造物を破壊する』という行為をしたまでです。被験者自身には危害はありません。」
前野「それで、実験の結果は?」
栄田「死刑囚は、実験前は非常に攻撃的な態度をとっていました。自信が起こした殺傷事件の精神的な負荷が大きく、まともな会話も出来ない状態でした。しかし、実験後は心身共に冷静さを取り戻し、実験前後の脳波を見てもそれは明らかでした。」
前野「つまり、実験は・・・・」
栄田「成功です。被験者の精神状態も安定し、最終的には正常な会話も行うことが出来ました。」
「その、被験者は今何処に?」
栄田「死にました。死刑を執行されて。」
前野「それじゃあ、検証の仕様が・・・・」
栄田「データはこちらで取ってあります。ご希望ならば、実験の過程の画像データを提供しますよ、かなり残酷な行為も収めてありますが・・・・」
前野「機会があれば、是非・・・」
「一つ、宜しいですか?」
記者団の中から一つ、手を上げる者がいる。
栄田は、内藤の仕切りを無視して、自らの手で挙手を指した。
栄田「どうぞ、」
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