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尾田の家からそう遠くない、高級マンションが立ち並ぶ場所が存在する。
その中の、高層階の一室、表札には「伏下勝也」(ふしげ かつや)と書かれている。
玄関には靴が二組、男物と女物。
だが、玄関から廊下、居間に至るまで、部屋の中は暗闇に包まれていた。
暗闇の中で、女のうめき声が響き渡る。
声は、居間にあるソファーの横から聞こえていた。
そこには、うつ伏せに倒れた女に、伏下が馬乗りになって首を絞めていた。
伏下の鼻先から汗が滴り落ちる。
滴り落ちた汗は、女の背中に伝っていく。
元から大きい伏下の目は、女を睨みつけるように徐々に見開いていく。
伏下は紐を握った両手を、力の限り外側へ引っ張り、自分の体の方へ、女の体を反らしていく。
もうちょっと、あと少しで消える・・・・
伏下がさらに力を入れると、女の足は激しく暴れだす。
あ、ああ・・・・えあ、あ・・・
女のうめき声は次第に擦れていき、左右に振っていた体も動きが小さくなっていく。
女の口から泡が吹き出し、苦悶の表情で瞑っていた目は、白目となって再び開きだす。
女の体が固まったとき、伏下は大きな息を一つ吐き出した。
伏下の息は振るえながら吐き出ていく。
頬は引きつり、ゆっくりと目を閉じる。
その表情は、優越感と、満足感に満ちていた。
生気の無くなった女の目は開いたまま微動だにせず、泡を吹いた口もまた、唾液を床に垂らしたまま僅かに開いていた。
伏下は立ち上がり、バスタオルを持って溶室に入る。
シャワーの水が流れる音。
数分後、伏下が髪を拭きながら居間に戻り、携帯電話に顔を近づけた。
伏下「ああ、もしもし、伏下ですけど、今終わりました。扉、開いてるんで、回収お願いします。」
伏下は携帯をテーブルに置き、冷蔵庫から缶ビールを取り出す。
三十分後、玄関の扉が開き、外から男が二人、居間の中へと入ってきた。
男達は、白のつなぎの作業服を着て、口には大きなマスクを付けていた。
「こんばんは、エセクト社です。」
二人の男が見たものは、うつ伏せに倒れた女の体と、その体に足を乗せて、ソファーでくつろぐ伏下の姿であった。
伏下「ご苦労様、これ、早く片付けてね。」
伏下はテレビ見ながら、足で女の体を揺すった。
「お疲れ様です。一応、精神テストをさせて下さい。」
男はそう言いながら、手に持った鞄を開き始め、聴診器を取り出した。
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