第1章

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まるで壊れた人形のように、消費後の開放感に浸り、笑い続ける人間もいれば、 消費を行なった派遣体に対する、後悔と懺悔で泣き崩れる人間もいる。 二人は問診をしながら、消費者の様子を窺ってきた。 果たして、消費行動は、消費者にとって効果的なのか。 今のところ、全ての消費者が共通するのは、「動揺」であった。 呼吸は乱れ、手を震わせ、精神状態が極限になると会話がかみ合わず、消費者の声が上擦る。 しかし、何度も消費者を見てきた二人にとって、「動揺」はむしろ、正常な反応であると解釈していた。 「消費」と言う名の擬似殺人。 慣れないことをすれば、気持ちが揺らぐのは当然のことであった。 そして、消費の感覚に慣れ、フラストレーションを派遣体に当たり始めて、派遣体の意義が成立する。 たった一人を除いては。 「どうする、上に報告して、派遣を停止するか?」 「何言ってんだ、ああいう人間がいるから調査の意義がある。しばらく続けて、他に動揺する特徴が無いか様子を見よう。」 「それまでに、変なことを考えなきゃいいけどな。」 「消費を派遣してる限りは、大丈夫だろう。」 ワゴン車にエンジンが掛かり、派遣体を載せた車はゆっくりと発進した。 伏下という男の、「消費」という行動。 そして、俺の部屋にいる、「ミカ」という派遣体。 全ては「エセクト社」という会社と、 「殺人擬似体験法」という法案から始まった。
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