『サッカーの神さま』

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聞いたことはあるけど、そんなことをしてもむだに決まっている。 そいつは、ぼくの返事を待たずにつづけた。 「そのほうは運がよいぞ。願いは、かなえられたもどうぜんじゃ。なにしろ神さまであるわしが、じきじきに聞いてやろうといっておるのだからな」 神さまだって?  なにいってんだこいつ、頭おかしいんじゃないか?  と思ったとたん、そいつのまわりの光が強くなった。 まさか? ほんとうに?  そんなことがあるのだろうか? ぼくの気持ちなどおかまいなしに、そいつはボールを指さした。 「それは、あれか? けるのか?」 ぼくは、思わずうなずいた。 「おお、けまりか! なにをかくそう、わしは、けまりがとくいでな」 けまりというのは、ボールをけってあそぶ、むかしのスポーツだ。 それにしても、そいつは本当にうれしそうな顔をした。 ぼくも、きのうまでは同じような顔をしていたのだろうか? 「じゃあ、あげるよ」 「ん?」 ぼくは、ボールを投げた。 下からゆっくりと。 そうでもしなければ受けとれないと思ったのだ。 ところが、そいつは後ろ向きになってヒールキックで返してきた。 おどろくほど正確に、ぼくのむねに。 返ってきたボールもぼんやりと光っている。 ほんとうに神さまなのだろうか? 「あげるとは、どういうことじゃ?」     
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