『サッカーの神さま』

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「ばかもの! ただで、すべての望みをかなえていたら、しあわせな者ばかりになってしまうではないか。たよってくる人間がいてこその神さまじゃ。……なにより、拝殿も古くなっておる。建て直すには金もかかる。たくさん出した者の願いを優先させるのが、すじというものであろう」 なんだか、うさんくさい。 神さまというよりは商売人のようなことばだ。 ぼくのいんしょうはまちがっていなかった。 あとで、おとうさんに聞いたら、ここの神さまは『商売の神さま』だといった。 「やくそくは、やくそくじゃ。願いはかなえてつかわそう。ただし、制限つきじゃぞ。そのほうの場合、今はいているくつに神通力をあたえるとしよう」 神さまは、そういって、ふところからおふだを二まいだした。 「これを、そのくつに入れておくがよい。練習をつめばつんだだけうまくなることうけあいじゃ」 おふだを受けとろうとすると、神さまはいった。 「境内のそうじをすればさらにうまくなるぞ」      二、 うさんくさいとは思ったけど、神社の下の広場で、その日から練習をはじめた。 うたがっていてもはじまらない。 ぼくは、うまくなりたかったのだから。 雨の日も、かんかんでりの日も休まなかった。 神社の境内のそうじもした。 おまいりもかかさなかった。 それにしても、おまいりにくる人が少なかった。 ケチなことをいわずに願いをかなえてあげれば、もっとふえるのにと思った。 あれいらい神さまはすがたをあらわさなかった。 それでも、ぼくは練習をつづけた。 雨の日も、雪の日も。     
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