『サッカーの神さま』

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『サッカーの神さま』

     一、 試合に負けた。 1―0で。 しかも、ぼくのオウンゴールで。 まっすぐ帰る気になれなかった。 サッカーボールをかかえて、神社によった。 ――くやしかった。 ――はずかしかった。 なみだがとまらなかった。 考えに考えて、サッカーをやめようと決心した。 気がつくと、あたりは暗くなっていた。 空をみると月がでている。 満月だった。 ずいぶん長い間、考えこんでいたらしい。 「そこの!」 こま犬の前を通りすぎようとしたぼくに、だれかが声をかけた。 へんなやつが立っていた。 うす暗くて、よく見えなかったけど、年寄りであることはまちがいない。 おとなにしては、ずいぶん小さかった。 長いひげをはやして、へんな服をきている。 神主のかっこうにそっくりだった。 「どうした? えらくつらそうではないか。もしや、ここがどこだかわかっておらんのではないか?」 だまって通りすぎようと思った。 だけど、足がとまった。 そいつのまわりがぼんやりと光っているように見えたからだ。 気のせいだろうか? 「――神社だけど」 「それならどうして、おまいりをしていかぬのじゃ。『こまったときの神だのみ』ということばを知らぬわけでもあるまい」     
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