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…まただ。
俺は太一に絡まれる。
「おい、そこのボーイ?ちょっと付き合ってくんねぇか?」
「嫌だ!嫌だぞ、俺は」
「『嫌だ!嫌だぞ、俺は』だってよ」
奴が、首をブルブル振るのでさえ大げさに再現すると、周りから笑いが起きた。
「なぁ、てめぇ調子に乗ってるよなぁ、いつも」
「違う」
「そうか。違うか。その次元にもいねぇってか」
「帰ってくれ」
俺が睨み付けると、太一は再び笑った。
「帰れ?今は昼メシを食べる時間だぜ?馬鹿なこと言うんじゃねぇよ。校則違反しろってことか?」
「…確かにそうなるな」
「ケッ、よく言いやがるぜぇ」
肩に手を回して大きな体が寄ってくる。
汗が自分に染み込んでくるようで、俺は露骨に顔をしかめた。
「見えてんぞ。てめぇの表情」
「だからどうした」
「は!馬鹿も大概にしろってんだ!」
もうこんな奴に構うことないだろ、太一は優しいなぁ。
三河がそう言って、俺を下から上へ上から下へと眺め、鼻で笑った。
「でもよぉ。俺がいなけりゃこいつぁもっと酷くなるぜ?老人も話し相手がいなけりゃボケが早いって言うじゃねぇか」
「…15歳の俺と老人を一緒にすんのか」
「あ?」
後頭部を拳でコツコツ叩かれる。
「…同じだろうがよ。下校時間も把握できねぇような奴が何言ってんだ」
また笑われる。
その中の一人、堀内がタバコを一本取り出した。
「おいおい、ここで吸うのはマズイぜ」
太一は苦笑いしながらもそれを制止する。
「あ?別に良いだろうがよ。先公なんか気にする必要ねぇし」
服からライターも出てきた。
明るい茶色の長髪を右側へ振って、彼女は火を点けた。
「しゃあねぇなぁ。よりにもよってこいつの目の前でやりやがるんだから」
「あー、そっか。こいつチクリ野郎だったな」
机に腰かけた彼女が俺の顔を見る。
綺麗な黒いまつ毛をしているから、俺の心臓は少し高鳴った。
「……いつもいつもさぁ、ウチらの邪魔とかしてさぁ、何が楽しいの?言ってごらん?」
「楽しくなんかない」
「じゃあその告げ口やめな?……あたしはこうしてるのが一番楽しいけどね。あんたも吸う?それか根性焼きしてやろうか?」
おぉ、それ良いんじゃね?
三河がそれに乗っかったが、太一はどっちでも構わないらしく、あまり反応しなかった。
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