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白い世界、無風なのに、完全に無風なのにべったりせず、逆に清らかでさえある。
ただ白紙を詰め込んだような色ではなくて、霧を何倍も濃くしたような感じ。
「な、なんだぁ?ここは」
太一が思わず叫んだ時、その奥からスッと誰かが出て来た。
「皆さんこんにちは。私、ルーカスと申します」
背の高い人だった。2メートルは越しているだろう。
銀色の髪が背中半ばあたりまで伸びている。ほおにはほうれい線がくっきり出ていて、三十代くらいに見えた。
「誰?バスケ選手かな?」
三河がおちゃらけてそう言った。すると彼は微笑みながら「僕は、ただの送り人だよ」と返した。
「送り人?今からどっかに行くの?俺らが?」
「そ。君達は、これからさっきまで居た世界とは別の場所に行くんだ」
「おー。異世界モノですな?」
「あ、知ってた?じゃ、話が早いね」
彼がみんなの顔をちょっと見回した隙に、堀内が言った。
「あのぅ、ウチはよく分かんないんだけど……、えと、どうしてウチらがピンポイントに集められたわけ?クラスの他の連中はほっぽって来てさぁ。やっぱ、ウチらが一番あの世界に必要ない感じ?」
「おいおい、逆だって、逆。俺らは選りすぐりのエリートなんだぞ」
「いや、だってメンツがおかしいじゃん……」
「じゃ、選んでねぇんだよ。たまたまだ。たまたま選ばれたんだ」
「それもタチが悪い話じゃねぇの……」
ルーカスを名乗るその男は会話をいちいち頷きながら聞いていて、やがて落ち着いてくると口を開いた。
「大丈夫。君達はね、夢の中に居るようなものだから」
「夢の中?」
「そう。だから、そう気張らなくても大丈夫だよ。死んだら元の世界に戻る。それだけさ」
本気だろうか。三河は首を傾げて、「都合が良い設定のパターンなのか?」と呟いた。
「じゃ、思いっきり楽しんでこいってことか?」
「そーゆーこと」
「ああ!それ良いじゃねぇか!それ良いよ!」
太一がルーカスとハイタッチした。
しかし彼は流石は送り人。さっきから何も反応していない俺に対しても「理解してくれたかな?」と聞いた。
「あ、うん……」
「おいおい、こいつはな、言うのもなんだけどちょっと頭がイッてるから、初対面の人と話せねぇんだよ」
「あー、そうなの。でもそれをよく本人の目の前で言えるよねぇ」
「だって今までそうだもんな。なっ」
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