第一章 扉を開ける

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ふと、我に返った。 いつもの病院への道だ。 いつもの診療の時間だ。 橋の上を通る道路の歩道。私はなぜこんなところでぼんやりしていたのだろう。我ながら、ぼうとしていて危ない。 橋の上から見える川の水は綺麗だ。川底が水を通して輝いて見えるほどに、眩しい。先月まで桜だった木々には若葉が繁っている。 目が眩みそうだ。 「お嬢さん」 いつの間にか、目の前に人が立っていた。ほっそりとした若い女性。大丈夫?顔が真っ青だ、そういう声が聞こえたのを最後に私の意識は途切れた。
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