第二章 あなたはなぜここへ?

2/4
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
え?私のことを説明すればいいんですか? ええ、構いません。 私は色んなものを捨てて、その街に来ました。 そう言うと、なんだか台詞みたいですね。 数ヵ月前のことです。 実家を出たのは大学進学時でしたので、それ自体はずいぶん前でした。仕事は首都圏で5年間同じ企業に勤めました。苦しいこともあったけど、それなりに愛着を持っていました。けれど、最後は苦しさの方が勝って、辞めてしまいました。辞めた当時は苦しさしかありませんでしたが、今は少しの懐かしさを持って思い出せるようになっています。 さて、私が首都圏を出て、ここに来たのは、新しくできた家族についてきたからです。 ええ、夫です。夫は、私が中高通った学校の1つ下の後輩です。勤め先は転勤が多く、この先、全国を転々とすることになるようです。時には、この小さな島国を出ることもあるようです。 あの、あなたとお話しすることが嫌だとかではないんですけど、ここ、多分病院ですよね?ここにいることが家族に知れるとあまりよくなくて。 え?なぜ?えーとですね、よくある話ですが、まぁ、そうでもないでしょうか。医師から、私そう長くは生きられないって言われてまして。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!