第三章 さて、答え合わせだ

2/4
前へ
/10ページ
次へ
夫に病気のことを話したのは結論から言えば、私が入院するほど悪化してからのことでした。しかも、私からというよりも、家族の方を呼んでくださいと指示した医師の口からでした。 私は医師の話を聞きながら、夫の顔を見ることができませんでした。自分の残り時間の話よりも、夫の顔を見ることの方が怖かったのです。夫は私を責めませんでした。医師の話が終わった後、病室で横になった私の手をただ黙って握り、それぞれの両親に電話をして来ると言って、出ていきました 結局のところ、実感は今になっても湧いては来ません。私は夫の悲しむ顔を見たくなくて、自分の気持ちも沈ませるのが嫌で、ここまで夫に話さずに来ました。 でも、それは。 起きてるの? 夫の声に私は驚いた。 全く気付かないほど、自分が没頭していたことにも。 ずっと考えてたの。 最初に病院で言われたときから。 夫の動きが止まる。何も言わない。これは怒っているか、期限が悪いときのサインだ。そして、大抵静かな声で話し出す。 どうして、話してくれなかったんだ? 先生の話じゃ、随分前に言われていたんだろう。 ごめんなさい。 私は怖かったが、夫の顔を見て謝った。 夫は怒った顔はしていなかった。ただ、悲しい顔をしていた。あぁ、結局この顔をさせてしまった。わかっていたのだ。本当は。この人は決して私を責めない。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加