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step 2「ブラックで何が悪い」
「じゃ、じゃあ……本当に、知里さん、元『ターゲット』だったんですか……」
「そうなのよー」
本人に聞くまでは……と、信じることを拒否していたが、最後の砦はあっけなく陥落した。
何でもないことのようにコロコロ笑う知里さんの顔を見て、がっくりとテーブルに手をついた。
まさか、まさか……知里さんが、かつて西藤さんの『改造』の『ターゲット』だったなんて……。
『女子会』と称し、知里さん、ほのかちゃんと連れ立って会社のそばのカフェに来ていた。
顔なじみのバイトさんが注文を取りに来たので、日替わりランチを3つ注文した。
「私本当にね、入社時生意気だったの」
ふふふ、と可笑しそうに笑う知里さん。
「学生時代から夢見てたデザイナーになれたんだーって、いきがっちゃってね。
そのくせ、なんだ『ダイニ』なんかって、勝手に劣等感持って、本当、調子に乗ってたと思うわ」
頭の中で、生意気で調子に乗った知里さんを思い描いてみた。
………。
ダメだ。全然イメージつかない。
「服装も、その時西藤さんから指導を受けたんですか?」
ほのかちゃんも不思議そうな顔をして、遠慮がちに尋ねた。
知里さんは、ええ、と頷き、またふふっと笑う。
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