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step 1「人は見た目が9.5割」
かつて夢見ていた。
キラキラした格好良いオフィス。
そこでスタイリッシュなデスクを囲み、
デザイン用語を連発して打ち合わせをするオシャレなデザイナー。
クライアントには毅然とした態度でスマートなプレゼンをし、終わった後は固い握手。
プロジェクトの完成披露レセプションでの堂々とした立ち姿。集まる羨望。
分かってる。
そんなもの、
何処にもない。
ドラマならともかく、
現実では。
「夢か……」
ぼやけた視界の中でも、見覚えがあると分かるくらい見慣れた天井を認識し、現実の自分の状況を悟る。
長年窓からの強い外光に晒され、すっかり白っぽく焼けてしまった網代編みの天井を見上げ、私は大の字になって寝転んでいる。
もう少し詳しく言うと、天井と同じく焼けた畳を隠すように敷いているオリーブグリーンのラグの上に、私は落ちたらしい。
真横にベッドの脚が見えるから。
「ちょっとー、美宙ぁ、今すんごい音したけどー。大丈夫~?」
「だっ、大丈夫!」
階下から響く母の声に我に返り、飛び起きた。
いけない、急いで準備せねば。
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