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「いらっしゃーー……なんだ、美宙か。
あ、仁さん、いらっしゃい!」
のれんをくぐると、活気のある店内に看板息子の威勢の良い声が響き渡る。
家から歩いて1分。ここ本所界隈で地元民にこよなく愛される焼き鳥居酒屋「すぎちゃん」。
お店を35年前に開いた初代が3年前に亡くなり、今は息子である浩おじさん(利恵子の幼なじみでもある)と奥さんの由梨さんが二人で切り盛りしている。
で、そこの一人息子が、私の幼なじみ杉山晴(すぎやま せい)だ。
親同士が仲が良い事もあって、ここ墨田に来て以来私たちはまるで兄弟のように育った。
小学校3年生くらいからだから、もう17年の付き合いになるのか。
「何だとは何よう。お客さんなのにぃ!」
キーッとなる私の肩に、ポンと大きな手を置くのは、私の祖父仁一(じんいち)。
「ホラ美宙、早くそっち座んな。
晴坊、とりあえず生二つな」
「へーい、あと枝豆ね」
いつも通りの注文をいつも通りに受け取り、晴ちゃんがカウンターの中へ下がって行く。
厨房では、浩おじさんと由梨さんがこちらに気がつき笑顔で手を振ってくれた。
それに手を振り返し、座敷の席に座る。
向かい側では仁じいちゃんがすでにおしぼりで手を拭いていた。
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