step 2「ブラックで何が悪い」

2/72
前へ
/149ページ
次へ
いや本当、今の知里さんから想像もできないんですけど。 「ちょうどねー、美宙ちゃんみたいな感じだったかな」 「えっ」 イメージできないどころか一番身近な具体例(っていうか自分)を示された。 「私、バリバリのデザイナーです~、カッコいいでしょ~、みたいな?」 「ち、知里さん……」 およそ知里さんには似つかわしくないセリフであることに、どうリアクションしていいか分からない。 しかも…… 「知里さんから見て、そんな風に見えてました…?私……」 似てるって思ってたってことはつまり、そういうことなんだろう。 うう、最近恥ずかしいことばかりだ。 「あ、まあそれは私の話でね。 新卒で怖いもの無しで、世間知らずだったから。大学時代に設計事務所にインターンとかバイトとか行ってたからね。社会なんてこんなものか、みたいにナメてたのね。 でも、例え社会に出ていたにしても、学生の立場から関わる社会と、本当に社会の一員になってからのそれじゃ、全然視点や役割が違うじゃない? それを混同してはき違えていたのね。 で、この部に配属になったときの教育係が、改先輩で…… そりゃもう、ガッツーーンと……」 「ああ……」 なんとなく想像できて、乾いた笑いになってしまった。     
/149ページ

最初のコメントを投稿しよう!

533人が本棚に入れています
本棚に追加