step 2「ブラックで何が悪い」

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ふう、と息を吐き、ずいっと晴ちゃんに詰め寄った。 「いい?私はこの店に初めて来たし、この店のみんなも私のこと知らないってことにして欲しいの!」 「はあ?」 思いっきり怪訝な顔で晴ちゃんが声を上げる。 「なんだよ、それ」 「会社の人に……この街出身だって話してなくて……」 「話せばいいじゃんかよ」 …………確かに、その通りなんだけど。 「あの、実は…… 自由ヶ丘出身という設定になってまして……」 「アホか!!」 すぐさま鋭く突っ込んでくれる晴ちゃん。 うう、予想どおりのリアクションありがとう……。 「大体、会社までチャリ通勤してんだろ!? 自由ヶ丘から墨田までチャリ通するやついるわけないだろ!」 「いや、自由ヶ丘は実家があって、今は汐留に一人暮らしという設定で……」 「アホの上塗りか!」 「返す言葉もありません……」 がっくりとベンチに座り込む。 はあ……とため息をつき、晴ちゃんも隣に座った。 「お前、西側コンプレックスだもんな……昔から」 「何それ…」 横目で晴ちゃんの顔を見る。 「新宿とか恵比寿とか代官山とか。 東京の西側のエリアに住みたいって昔から言ってたじゃんか。オシャレな街が良い、こんな下町じゃイヤだって」 じろりと視線を寄越す晴ちゃん。     
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