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ふう、と息を吐き、ずいっと晴ちゃんに詰め寄った。
「いい?私はこの店に初めて来たし、この店のみんなも私のこと知らないってことにして欲しいの!」
「はあ?」
思いっきり怪訝な顔で晴ちゃんが声を上げる。
「なんだよ、それ」
「会社の人に……この街出身だって話してなくて……」
「話せばいいじゃんかよ」
…………確かに、その通りなんだけど。
「あの、実は……
自由ヶ丘出身という設定になってまして……」
「アホか!!」
すぐさま鋭く突っ込んでくれる晴ちゃん。
うう、予想どおりのリアクションありがとう……。
「大体、会社までチャリ通勤してんだろ!?
自由ヶ丘から墨田までチャリ通するやついるわけないだろ!」
「いや、自由ヶ丘は実家があって、今は汐留に一人暮らしという設定で……」
「アホの上塗りか!」
「返す言葉もありません……」
がっくりとベンチに座り込む。
はあ……とため息をつき、晴ちゃんも隣に座った。
「お前、西側コンプレックスだもんな……昔から」
「何それ…」
横目で晴ちゃんの顔を見る。
「新宿とか恵比寿とか代官山とか。
東京の西側のエリアに住みたいって昔から言ってたじゃんか。オシャレな街が良い、こんな下町じゃイヤだって」
じろりと視線を寄越す晴ちゃん。
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