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「いや……下町も、住んでるみんなも好きなんだよ?
ただ本当……西側に憧れてるだけで……」
しゅん……としてつぶやくと、晴ちゃんはすぐに表情を崩した。
「ま、もともとあっちの方に住んでたんだもんな。墨田に来るまでは」
「んー、まあね、オシャレな街では無かったけど」
小学3年の時、母と一緒にこの街に来た。
さっき言ったことは本当で、この街も、暮らしている人達も来た時から好きだけど、どこか自分が余所者という気遅れを感じていた。
きっとそれくらい、長い年月結びついている地域の絆が羨ましく見えるということなんだろう。
きっとそんなこと言ったら晴ちゃんは怒りだすに違いない。
「ほ、ホラ、デザイナーと言ったらオシャレな街に住んでる方がハクがつく感じがするじゃない?
だからつい……」
「そこんとこ俺にはよく分かんないけどさ。
まあお前が見栄っ張りなのはよぉく知ってる」
本当にその通りだ。こないだの服装の件といい。
見栄っ張りなのだ、私は。
そしてバレバレ。
「でも本当にバレないもんなの?普通総務とか把握してるだろ、住所くらい」
「それは……総務の情報管理担当の人をを買収して、このことは絶対他にバラすなって言ってあるから……」
「ばっ、買収って!何してんだよお前……」
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