373人が本棚に入れています
本棚に追加
よく周囲を見るとまだまだ、通勤ラッシュは終わってはいない。スーツ姿でみんな、颯爽と歩いて行く。
「何だ? これ」
上之原巡査部長は、何かに気が付いたらしい。道路に落ちている小さな板を拾い上げた。赤い紐がついていた。絵馬だった。後ろに馬の絵が描かれた絵馬。
「何だよ、おい」
頓狂な驚きの声が上之原巡査部長の口から、こぼれる。
「どうしたんですか?」
私は、ひょい。と、髪をかきあげながら除いた。
『神様、私を殺して下さい。野波 奈々』
「えっ……」
短いけれど、恐ろしい言葉に私も彼も、体がフリーズする。
「おいおい、何だよ、不謹慎だなぁ」
最初のコメントを投稿しよう!