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もう一度言う。例えどんな美人でも、付き合いたくない。
俺はあの子じゃないと、嫌だ。
彼女は帝都女子大の学生だった。綺麗で髪が長くて、明るくて。
今はどうしているのか、探した。
見つけた。十条駅近くの交番にいた。でもいつしか姿を消した。今は赤羽の東西署にある刑事課で、女性刑事として活躍しているとの事だった。
彼女は俺を許してくれるだろうか。
もう一度会いたい。
ヘルメットもとっくの昔に捨てたし、髪も綺麗に切った。
金もたまった。もう一度付き合えないだろうか。俺と結婚してくれたら、金銭的に何不自由する事はない。将来安泰だ。
今、徐々に湾岸エリアを中心に、少しづつ建設が進められている。
これから、どんどん開発が進んでいくだろう。
おそらく、この周辺の会社の株価が騰がる。きっと。
今度は真面目に。結婚を前提に。そんな事を考えて歩いていると、神秘的な鐘の音色に、驚きを覚えた。
俺は、どこをどう歩いてきたのか、気がつけば赤羽教会の前を歩いていた。鐘の音は綺麗に奏でる。まるで音楽のように。
思わず、うっとりしてしまった。
彼女の綺麗な髪を思い出す。
この街のどこかで暮らしている。
どこで暮らしているのだろう。
そんな事を考えながら、十字架にもう一度あの子に会える事を願った。
上條恵に。
君に会いたい。君に会えますように。
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