序章

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序章

 昭和五十八年。  東京帝都大学を卒業して三年目。俺は『しらけ世代』の人間だ。  さて、しらけ世代とは……。  日本の学生運動が下火になった時期に成人を迎え、 政治的に無関心になり、青春時代を過ごした人の事だ。1980年を過ぎた頃、政治などに関心が薄く、何においても熱くなりきれない学生がほとんどだった。  それだけ経済は安定してきたという事だ。    そんな俺の仕事は大手ゼネコンの現場監督。  少しづつ仕事に慣れ、自分に自信がつき始めた。給料が良いだけに、色んな女が寄って来た。  例えどんな美人でも、付き合いたくない。  俺はあの子じゃないと、嫌だ。  彼女は帝都女子大の学生だった。綺麗で髪が長くて、明るくて。  今はどうしているのか、探した。  見つけた。十条駅近くの交番にいた。でもいつしか姿を消した。今は赤羽の東西署にある刑事課で、女性刑事として活躍しているとの事だった。
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