ゆめのなかで

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 光ちゃん、俺は光ちゃんに出会えて良かったよ。 「・・どうした、やぶから棒に」  皆に下僕みたいって馬鹿にされることもあったけど、俺は光ちゃんを主人だと思ったことはないよ。一度も。 「当たり前だ、お前は俺の・・・」  ただね、次に生まれてきたら、俺は女で生まれたいな。  そうしたら、俺と光ちゃんは最高の恋人になれたと思うんだよね。 「何を馬鹿なことを・・・俺はお前みたいなチャラチャラした彼女など御免こうむるに決まってるだろう」  ふふ・・ 「・・なにが可笑しい・・」  光ちゃん、照れちゃってさ。顔、真っ赤だよ。 「ば・・っ、馬鹿者!」  肩を揺すって笑う度に高峰の前髪がサラサラと音を立ててなびく。  黒目がちな瞳が柔和に下がり、形のよい唇が動くのを、瞬きしながら眺めていた。まるでひとつの絵画を観ているような、そんな不思議な気分にさせる。  胸にざわめきが広がる。 「光ちゃん・・・・」  笑みを潜めた高峰の目に一瞬、陰が差して、すぐに消えた。  消えたあとは水分の反射のせいか、チラチラと光る。眉を下げて、そのまま哀しそうに微笑む。 「・・・・」  高峰の唇が動くのに肝心な言葉が聞き取れずに「なんだ?」と聞き直すと高峰は笑った。 「なんでもねーよ、ほら、もう練習戻ろうぜ」  タオルを首に巻いて高峰が「よっ」と勢いをつけて立ち上がる。体育館の出入り口の階段を二段飛ばして軽やかに駆け上がる姿を光一郎は見送った。
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