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本当はずっと、ずっと前から、高峰が自分にとって特別で、愛しい存在だったこと。いつも側にいてほしかったこと。この感情が恋だったのならば、光一郎もあの時から高峰に片思いをしていた。
「なに、それ?」
急に一人で考え込む様子の光一郎に高峰は黒い目をパチクリさせた。
「いや・・、高峰、俺も同じだ」
「ん?」
「すごい幸せってことだ」
至って真面目な顔をして似合わない台詞を吐く光一郎に堪らず高峰は吹き出す。
「ぶはっ」
ムードもへったくれもなく、またもや盛大に笑い出すと思われた高峰だが、光一郎の頬を両手で包み込む。
こつんと額を合わせて祈るように静かに目を閉じた。
「光ちゃん、俺の幸せは全部光ちゃんにあげるね」
「なにを言う、俺の幸せだって全部お前にやるに決まってるだろう」
負けじと言い返す光一郎に高峰はふんわり微笑む。
そのまま、ふたりは顔を合わせて笑いあった。
想いが通じ合うことの喜びは暗く切ない6年間を凌駕するほどに遥かに幸せであった。
片思いしている頃より更に光一郎を愛しいと思った。
大好きな人を思いっきり愛していいという喜びと、大好きな人から思いっきり愛されるという喜び。
この幸せを知ってしまった以上、多分きっと、もう手放せないのだろう。
END
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