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「あずみ、ちょっと」
マミに呼ばれ、廊下へ出た。
「芹澤とあずみ、付き合ってるんだって?」
「う、うん。そうだけど……えっ、私まだマミには言ってなかったよね」
「それなんだけど……。芹澤、学校来るなり武勇伝っていうか……あずみとの事色々喋りだして……」
芹澤くんが?
頭が真っ白になった。動悸が早くなる。湧き上がる疑問に答えが出ない。
「何で……」
「ごめん、あずみ。でも早めに知らせた方がいいと思って」
マミが謝る事なんてない。心配を掛けちゃいけないと思い、必死に涙をこらえた。
もうすぐ先生が来る時間だ。早く教室に戻らないと。頭の片隅でどこか冷静な自分がいるけれど、身体は動かない。
「マミ、ありがと……先行ってて」
マミは戸惑いを隠せない様子を見せながらも、教室へと戻った。
その姿を見送り、私は校舎を飛び出す。
涙が頬を伝って行くのがわかる。先生に呼び止められるも『早退します』と勢いよく告げ、校門を抜け、走った。
流れる景色の中に、遅刻ギリギリにも関わらず、マイペースに歩く一人の男子が視界に入る。
「あずみ!?」
聞き慣れた大きい声。
――耀太だった。思わず立ち止まる。
「耀太」
「どうしたんだよ」
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