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さすがに泣きながら走っている姿に驚いたのだろう。両目を大きく開き、私の顔を見据える。
耀太、何も知らない耀太。
でも、あの教室に足を踏み入れたら、芹澤くんと私の話を知る事になる――。
「行かないでっ……」
気がつくと大声で、耀太の両腕を掴んでいた。
「あずみ、落ち着け、何があったんだよ?行かないでってどこにだよ」
「……学校」
自分が何をしているのかわからない。
ただ、耀太に知られるまでの時間を、先延ばしにしたかった。
「よくわかんねぇけど、俺が学校行かなきゃ落ち着くのか?」
耀太の両腕を掴んで、相撲をとるような格好のまま、縦に首を振る。
「プラネタリウム」
「え?」
「プラネタリウム行きたい」
そこは、絶対に芹澤くんが来ない場所だから。
芹澤くんとの思い出がない場所だから。そこへ、逃げたいと思った――。
照明が落とされると、ドーム型のスクリーンに星空が再現された。
泣き腫らした目を思わず見開く。
夜空に、星に、その先の宇宙に思いを馳せると、次第に気持ちが落ち着いて来る。
小さい時からそうだった。何があっても、壮大な地球の外の世界を想像すると、自分の悩みが小さいものに思えた。
上映が終わり、近くの公園に立ち寄って、ベンチに腰掛ける。
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