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ああ、離れるにしても、せめて背中だけでも見える位置が良かったよ。
逆に、芹澤くんは私の背中を見つめてくれるのかな。くれるよね。
そして新しく私の隣になったのは、幼稚園からずっと一緒の耀太だった。
「あずみかよ。新鮮味全くねぇー」
早速これだ。私だって耀太の顔は見飽きてる。
「しょうがないでしょ」
「まいいや、そうだ、昨日バス乗ったらさ、すげー変な奴いたの、まずさ……」
ハイテンション。マシンガントーク。
ああ、もう、これから毎日耀太のつまらない話を聞かなきゃいけないのかと思うと憂鬱。
視線を後方に向ける。
芹澤くんは、静かに窓の外を眺めていた。
9月5日 今日は席替えがあった。隣は耀太。芹澤くんとは離れちゃった。
今朝撮った曇天の画像とともに、力なく送信ボタンを押した。
※
原宿、お台場、ディズニー・シー。
引っ越して来る前、岐阜に住んでいたという芹澤くんは、東京の事はほとんどわからないらしく、今までのデート先は全部私が決めている。
そして今日はお弁当を持って代々木公園へとやって来た。
10月に入って日差しも柔らかくなり、爽やかな秋風が頬を撫でる。
レジャーシートを広げて腰を下ろす。
「東京でもこんなに緑が多い場所あるんだな」
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