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振り向きざまに撮った芹澤くんの写真は、予想に反してブレる事なく撮れていて、カッコイイのだけれど、別人のようにも見える。そしてそれが一層、せつなさに拍車を掛けた。
※
結局どこに行くか決めないまま、週末になった。
「とりあえず駅で待ち合わせよう」のLINEを受け、芹澤くんの住む街の最寄り駅で待ち合わせる事にした。
天気は今のところ 保っているけど、いつ降り出してもおかしくない空模様をしている。
「お前なにやってんの?」
突然、背後からデリカシーのない声がして驚き、思わず肩をすくめて振り返る。
「びっくりしたぁ。耀太か。何してるの?」
「俺は吉田達と待ち合わせして今から遊び行くとこ。お前は?」
「え、あぁ……」
正直に言うべきか、ごまかすべきか。でも耀太に知れたら芹澤くんとつきあってる事がクラス中に知れ渡る。
教室でおおっぴらに『あずみと芹澤、付き合ってんだって』と話す姿が簡単に想像できてしまう。
判断に迷っていると、芹澤くんがこちらに気づき、向かって来るのがわかった。
私の視線が芹澤くんに注がれている事に気づいた耀太は、目を丸くした。
「え、芹澤と?え?え?」
「うん」
仕方なく頷く。
そして、芹澤くんが私と耀太の前に現れた。
「ごめん、遅れて。ん?高梨どうしたの?」
「あー、いや、俺は吉田達と約束あって……それより、お前ら付き合ってるんだな。知らなかった」
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