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「ああ、付き合ってるよ」
「耀太、変に言いふらさないでよ?」
私が耀太に釘を刺すと、その言葉に反応したのは芹澤くんだった。
「何で? 別にいいじゃん。恥ずかしいの?」
「いや、恥ずかしいとかじゃないんだけど……」
どうしよう、うまく説明できない。
芹澤くんは不思議そうな顔で私を見ている。
私の知らないところで勝手に広まって、噂されたり冷やかされるのが嫌なの。と言ったところで理解してもらえるのだろうか?
「大丈夫だよ、言わねーよ、じゃあ俺行くわ」
そう言い残すと、耀太は片手を上げて立ち去った。
「あずみと高梨って仲いいよね、幼馴染みだっけ?」
「う、うん」
頬に滴が当たる。
数十秒後、その滴は滝に変わった。
ザァーーーーーーーッ
物凄い勢いで、雨がアスファルトを叩きつける。
急いで建物の中に逃げ込んだものの、身体は濡れ、体感は一気に真冬並みになった。
「はぁ……、今日どうしよっか」
少しでも暖を取る為に自らの両腕をさすっていると、芹澤くんが何かを呟いた。
「……来ない?」
「え?」
「俺んち来ない?」
手を止め、芹澤くんを見る。
数秒私を見つめた後、気まずそうに視線を落とした。
「傘探して買ってくるわ、あずみ待ってて」
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