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私と父を捨てて、別の男の元へ去り、私の中では抹消したい【実の母親】と言う女の血が半分流れていると思うとゾッとする。
居なくなってから父は私を男手ひとつで確りと育て上げた。そして私が大学を卒業し就職すると安心したかの様に安らかに逝った。
葬儀の日にもあの女は現れず、父を失った悲しみとあの女への憎しみが入り雑じった感情を放出するかの様に葬儀所で人目を憚らず、大きく素直に号泣した。
職場では良縁にも恵まれて、我が家の家庭を知った上で交際してくれた彼氏。説明して結婚を了承してくれた彼のご両親。感謝してもしきれない。
だから、夫と義父母に対して墓場まで持っていく覚悟で今回の事を決めた。
出費は掛かったが調査員を雇い、あの女の現在の素性を調べてもらった。
一緒に逃げた男と家庭を築き、子供まで儲けて、現在は二世帯住宅に住んで孫の面倒や共働きの子供達のフォローをしており、近所でも評判の人物らしい。
明日、私と夫はその二世帯住宅の隣に住むことなっている。
引っ越しの挨拶をして、私だと気付くだろうか?
気付かないかもしれない。
気付かなければ教えてやろう。
どんな反応をするのだろう?
今から想像しただけで嬉しさが込み上げてくる。
自分の償いが終わったと思っているあの女に、自分の築き上げた領域に忘れ去られた亡霊がやって来るのだ。
私は明日が待ち遠しい。
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